ランニングをしていて足の甲や中足部に痛みを感じると、「疲労骨折かもしれない」と不安になることがあります。
足の中足部に痛みが生じた場合、疲労骨折の可能性を考慮し、練習を継続するか慎重に判断する必要があります。
疲労骨折は繰り返しの負荷で骨に微小な亀裂が生じる状態で、特に脛や中足骨に多く発生します。初期診断にはMRIが有効ですが、通常は1~1.5か月後にレントゲンで骨癒合の兆候(骨折部に白い線)が確認されるまで診断が難しい場合があります。
一方、中足部の痛みには足底筋膜炎(または足底腱膜炎)も原因となることがあります。
この疾患では、足底筋膜が炎症を起こし、かかとから土踏まず、指の付け根まで痛みが広がります。特に朝起きた直後や運動後に鋭い痛みを感じることが特徴です。
中足部の痛みを放置して運動を継続すると症状が悪化し、疲労骨折につながる場合もあるため、早期診断と適切な対応が重要です。
痛みが出た際は、無理をせず一旦練習を中断するのが賢明です。個人差はありますが、多くの場合は1週間ほどで痛みが引き、再び走れるようになることが一般的。
ただし、場合によっては1ヵ月以上痛みが続くこともあり、筋や軟部組織の損傷が原因の可能性もあります。このような症状に悩まされるランナーに向けて、対処法や注意点を解説します。
*2ヶ月経っても、痛みが取れず骨癒合の兆候が出ないことがあります。その時は、疲労骨折の疑いがあるのでMRIなどでの確認も検討してください。
足底筋膜炎
足底筋膜炎(または足底腱膜炎)は、足の裏にある「足底筋膜」が炎症を起こし、痛みを引き起こす疾患です。この筋膜は、かかとから指の付け根まで伸びており、足のアーチを支えたり衝撃を吸収する役割があります
足底筋膜炎の症状には以下の特徴があります。
- 踵や足底が地面に着地した際に足底筋膜が伸ばされて痛みを感じます。
- 朝起きてから最初の1歩が激しく痛むことや急に歩き出すと痛む症状があります。
大抵は踵の痛みが多いのですが、中足部に痛みが出ることもあります。
足底筋膜炎の原因
ランニングやジャンプ動作などで、荷重による衝撃と強く引っ張られる力の両方が繰り返されると、足底腱膜に大きな負荷がかかって、小さな断裂や炎症が起こりやすくなります。
足首が硬い場合、柔軟性がないため、足の裏の筋膜に負担がかかり炎症が起こりやすくなります。
足底筋膜炎の予防
オーバーユースにならないように練習量を調整し、足の裏やふくらはぎのストレッチや筋トレをして筋肉の柔軟性を高め、クッション性の高いシューズを選んで足への衝撃を和らげることがだいじになります。
ストレッチボードの利用や、足首のストレッチなどを取り入れて足首の柔軟性を高める。
疲労骨折
高校生の息子が経験した中足骨の疲労骨折ー診断まで 高校生の息子が左足の中足骨の痛み(歩くのも痛いほどの痛み)を訴えたため、近所の整形外科を受診しました。レントゲンを撮りましたが骨に異常はみられず、医師からは「様子を見ましょう」と言われひと月半様子を見ました。改めてレントゲンを撮りましたが、骨癒合の兆候はなく、原因不明のまま。じっとしていられない息子は、ふくらはぎの筋トレや足首のストレッチを始めました。しかし、2日後、くるぶしの辺りが腫れてしまいました。どうやら筋を痛めたようです。足を痛めてから2ヶ月が過ぎた頃、結局原因が分からないまま、医者から運動許可がおりました。マラソン大会が迫っていたため息子は喜んでランニングへ。しかし、たった1キロ走っただけで痛み(歩くのは痛くないが走ると足の裏の真ん中ぐらいからズッキン、ズッキンみたいな痛み)がぶり返し、歩いて帰宅することに。「どうしてこんなに長引くのか?」と原因が分からず歯痒い思いをしていた私はネットでスポーツクリニックを探しました。そして偶然見つけたクリニックで、幸運にも経験豊富な先生に見てもらえることに。診察後、先生はすぐに「MRIを撮りましょう」と判断しました。驚いた私は思わず、「2ヶ月も経ってるのにまだ疲労骨折の可能性があるんですか?」と尋ねました。先生は、当然のように「ありますよ」と一言。MRIの結果、左足中指の中足骨の疲労骨折。 痛みの原因が分からず長期間悩んだ末、適切な診断に辿り着くまでに時間がかかってしまいました。疲労骨折はレントゲンでわかりづらい事があり、MRIを撮ることが重要だと実感しました。スポーツをしたいる方やそのご家族の参考になれば幸いです。
疲労骨折の初期症状が疑われる場合、そのまま練習を続けると症状が悪化するだけでなく、回復までにかなりの時間が必要になる可能性があります。
そのため、このような痛みが現れた際は、ランニングや激しい運動を一時的に中止することが最善の対処法と考えられます。特に、速いペースで走ると痛みが強くなるため、練習を継続するのは難しくなります。
疲労骨折の初期症状には以下の特徴があります。
- 違和感や軽い痛み:運動中やその後に足の脛骨、腓骨(スネの前後の骨)や中足骨(足の甲の骨)に痛みを感じることが多い。
- 運動時の痛みの増加:初期では、運動後に痛みが和らぎますが、進行すると運動中や安静時にも痛むようになります。
- 腫れや圧痛:患部が腫れたり、触ると痛みを感じることがあります
- 息子の場合は安静時も痛みがありました。日数が経つと安静時は痛みがおさまりましたが、少し運動をすると痛みが出てました。
疲労骨折の原因
- 筋力不足や柔軟性の欠如:筋力が弱いと、運動時の衝撃が直接骨に伝わりやすくなり、骨が疲労します。また、柔軟性が不足していると身体の動きが硬くなり、特定の部位に負担が集中しやすくなるため、骨へのストレスが増加します。
- オーバーユース:長時間のランニングで特定の部位に負荷が集中し、筋肉の疲労が蓄積して筋肉が衝撃を吸収しきれず、骨に直接ストレスがかかる。
- 不適切なシューズ:クッション性の低いサイズの合わないシューズは、衝撃を吸収できず骨への負担を増加させます。特に踵が高いシューズは中足骨などに負荷を集中させやすく、疲労骨折のリスクを高めます。硬いプレート入ったシューズも慣れていない場合、足への衝撃が蓄積しやすいので注意が必要です。
- 硬すぎる地面:アスファルトなどの硬い路面では着地時の衝撃が大きくなり、骨や関節への負担が増加します。この衝撃が繰り返されると骨に微細な損傷が蓄積し、疲労骨折につながります
- 栄養不足:骨の強度に必要な栄養素が不足すると骨が脆くなるためです。特にカルシウムとその吸収を助けるビタミンDが不足すると、骨密度が低下し、繰り返しの負荷に耐えられなくなります。
疲労骨折の予防
• 運動と柔軟性: ストレッチや筋力トレーニング、バランス能力の向上で体を強化し、負荷を和らげる。(ストレッチボードも有効)
• 適切な用具: 衝撃吸収性の高いシューズやインソールを使用し、運動強度や練習場所の硬さを考える。
• 栄養管理: カルシウムやビタミンK、タンパク質など骨を強化する栄養素を十分に摂取する。
• 負荷の調整: 運動量を徐々に増やし、局所への過剰な負荷を避ける。
ランニングで中高年が疲労骨折を起こしやすい部位は、
脛骨(すねの太い骨)35%
中足骨(足の甲の骨) 26%
これらの部位で疲労骨折が起こる割合は全体の約7割を占めています。,
同じ動作を繰り返して発症した場合は、その動作を1~2ヶ月程度行わないようにすると、ほとんどが快方に向かいます。
スポーツへの復帰は、骨折部の圧痛がないことや筋力の回復状態、X線検査で判定されます。通常2~3ヶ月で可能となります。
まとめ
怪我をしてしまうと、走ることを継続する事が困難になります。少しでも体のどこかに違和感を感じたら、無理をせず走るのをやめ、痛みが取れるまで様子を見ましょう。急激に運動量を増やすと、筋肉や骨が対応しきれず怪我につながるため、慎重に調整することが大切です。
より楽しくランニングを続けるための書籍も出版されており、正しい知識を身につけることで怪我を防ぎながら走る事ができます。

出典:Amazon
足底筋膜炎や疲労骨折の主な原因は、オーバーユース、ストレッチ不足、休養の欠如が原因です。適切なストレッチ、シューズ選び、運動量の調整を行うことで予防することが可能です。
どちらの症状も放置すると悪化する可能性があるため、痛みが出た際は運動を一時中断し、適切な休養と治療を行なってください。復帰までは時間がかかるのが一般的なので焦らずにゆっくり治しましょう。完治する前に運動を再開すると、かえって回復が遅れてしまうため、慎重に復帰のタイミングを見極めましょう。
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